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卒業式、私はある決心をして
「最後だから言うけど、私、あの佐藤友也の妹なんだよね。アンタたち散々悪口言ってたけど、これでお別れだと思うと清々するよ」
「は? いきなり何なの?」 「もう二度と顔見せないでね。私はアンタたちが一生かけても行けないような高校に行くから会うことはないけどね。ばいばーい」言いたいことを言ってスッキリした私は教室を出ていく。
菜々達は呆気にとられた顔をしていた。下駄箱で靴に履き替えていると、めぐが焦った様子で追いかけてきた。
「どうしたのゆず――」
「ごめんめぐ、私急いでるから! またね」無理やり話を終わらせて一人で帰る。
公園に差し掛かった時に後ろから菜々に声をかけられた。「おい佐藤、ちょっとツラ貸しな」
――――――
―――― ―― 「マジうけんだけど~」 「何すわっちゃってんの~?」 「お腹でも痛いんですか~?」 「「ぎゃはははは」」私はお腹を押さえてうずくまる。
私からワザとけしかけたとはいえ、いきなり暴力なんて本当にどうしようもない奴らだ。「まさかアンタにあんなキモイ兄貴がいたなんてね~」
「思い出しただけで吐きそうー」 「だからどうしたのよ! それより私を蹴った事謝りなさいよ!」 「は? どうでもよくないっしょ~!」 「そうそう」 「まさかアンタがあの自分で招いた状況だけど、お兄ちゃんをバカにされるのは本当にむかむかする。
本当のお兄ちゃんを知らないくせに。 そう思いながら力強く反論する。 菜々たちはそれを嘲笑う。「いや、関係大ありでしょ~」
「そうそう」 「あんなキモイ兄貴いるやつと一緒に居たくないし~」 「実はアンタもヲタクなんじゃね?」 「きゃはは、言えてる~」 「私は違う!」 「ふ~ん。ま、どっちでもいいけどね~」 「どういう意味よ?」 「アンタ高校兄貴と同じ所行くんだろ? アタシたちは学校ちがうからさ~」 「だから何? あなた達に関係ないでしょ?」 「そ。もう関係ないね~」 「だから二度と友達面しないでね~」さっき私が放った言葉をわざとらしく言い返してきた。
そして足で地面を蹴って私に砂を掛ける。「兄貴となかよくね~、きゃはは」
菜々たちは去っていった。
しばらくして私は立ち上がり砂を払う。 そして家に向かって歩き出した。帰宅後、軽くシャワーを浴びて砂を落とす。
ラフな格好になりリビングでお茶を飲んでいると、玄関のドアが開く音がした。 そして私は泣いたふりを始める。 お兄ちゃんが「ただいま~」と一言放ちそのまま自分の部屋に向かう。 泣いたふり終了。 ソファーに座ったまま、スマホに目を落とす。 〈さっきはごめんね、めぐ〉 〈ゆず、今日はどうしたの? 急にあんな事言うなんて〉 〈どうせ最後だし思い切って全部ぶつけようと思ってさ。あースッキリした!〉その後は他愛もないチャットを続けた。
親友のめぐでさえも私の計画は知らない。 間もなくお兄ちゃんが一階に降りてきた。「あ、お兄ちゃん帰ってたんだ。おかえり~」
「おう、ただいま」お兄ちゃんはたまに、お父さんたちが帰ってくるまではリビングでくつろぐ。
私の一つ隣で、ソファーに腰を掛けテレビをつける。 少しの間、テレビの音だけが流ていた。 テレビを見ながらお兄ちゃんが真剣なトーンで問いかけてくる。 「今日で中学最後だったろ? どうだった?」 「う~ん、特別変わった事は無かったかな~」 「そうか」 「カラオケに誘われたけど今月ピンチだから断ってそのまま帰ってきた感じ」 無理をしていないように振る舞うために私は嘘をついた。 帰宅早々、妹が泣いている姿を目撃、そんな妹が強がっている素振りを見せたのなら……「柚希、俺の事で虐められたりしてないか?」
ほら、やっぱりね。
テレビを消し、私の方に身体を向け、想像通りの質問をしてきた。 私は一瞬ビックリするような表情をしてみせ、すぐに笑顔ではぐらかす。「なに言ってるのお兄ちゃん、そんな事ないよ~」
「さっき公園でギャルグループに囲まれてただろ?」 「……」笑顔を無くし目線を下げる。
見られたくないものを見られたショックで言葉が見つからない。 そんな悲壮感を演出する。「見てたんだ……?」
「……偶然な」 「そっかぁ……」偶然なんかじゃない。
あれは見せるためにやった事だ。あの時、お兄ちゃんが隠れて見ていたのは気づいていた。
だからわざとらしく悔しそうに俯き震えているふりまでした。 案の定、お兄ちゃんは食いついてきた。 少し沈黙した後、私は口を開いた。「私ってさ、自分で言うのもなんだけど、男子からも女子からも好かれてて、お兄ちゃんが言う所のパーフェクトヒロインだと思うんだ。クラスのトップカーストにも属してるしね。私凄いリア充でしょ? ふふふ」
そしてギャルグループ――佐伯菜々についても話し、その間、お兄ちゃんは黙って聞いていた。
「お兄ちゃんって悪い意味で中学の時有名だったじゃん? いつも一人で居てマンガ読んだりゲームしてたりしてて、話す時もぼそぼそと何言ってるかわからないキモヲタクだって」
「ああ……」それを聞いたお兄ちゃんは遠慮気味に相槌を打った。
「私とお兄ちゃんて全く正反対じゃん? だから私がお兄ちゃんの妹だって分からなかったみたい。お兄ちゃんも学校では絶対に私に近づこうともしなかったしね」
そしてこの間、お兄ちゃんと買い物に行った時、ギャルの菜々に見られていた事を伝える。
次の瞬間、迂闊だったという顔をしている。 お兄ちゃんは思ったことがすぐ顔に出るからわかりやすい。「次の日にギャルグループがウチのグループに接触してきて、私がお兄ちゃんの妹だって皆にバラしたの。皆凄いおどろいてたなぁ」
それでいじめられてたのか? という問いに私は違うと答える。
すると、ならどうして? という表情をしていたので私は嘘の理由を話す。「中学最後だからこれまでの分も含めてのお礼参りだってさ。今時お礼参りなんて笑っちゃうよね~」
私が知ってるお兄ちゃんなら、こんな状況放っておくわけがない。
私がお兄ちゃんを好きなくらい、お兄ちゃんは妹の私が好きなんだから。 それは今も昔も変わらない。 「柚希! どうすればリア充になれる!?」 「……ええええぇぇぇぇ!?」よっし! やっぱりお兄ちゃんは根っこの部分は昔と同じだ!
こうしてお兄ちゃんがリア充に成る為の特訓が始まった。 この数日間、お兄ちゃんは驚くほど変化を遂げた。 というよりも、昔のお兄ちゃんに戻ってきたっていうべきかな。 〈友也さん、別人みたいにカッコよくなってびっくりしちゃった〉 〈もしかしてめぐ、惚れちゃったの~?〉 〈かもしれない~。思わず掲示板に書き込んじゃった~☆〉掲示板か……使えるかもしれない。
そんなやり取りをベッドで仰向けになってめぐとしていると「柚希、起きてるか?」
と、お兄ちゃんがノックしてきた。
私はドアから少し顔を出した。「どうしたの?」
「昼間の事で少し話があるんだが、いいか?」 「……」 お兄ちゃんが私の部屋に来るなんて何年ぶりだろう? わざわざ来るって事は、もしかしてめぐの事かな? だとしたら好都合だ。 「入って」お兄ちゃんを部屋に招き入れ、私はベッドに腰掛ける。
お兄ちゃんはキョロキョロと部屋を見回す。「それで話って何?」
「めぐの事に関係してるんだけど」やっぱりめぐの事だ。
めぐは一年女子でも指折りの可愛さだと思う。 そんなめぐが好意を寄せるイケメンの先輩がお兄ちゃんという構図が出来たら、私の計画にプラスになるかもしれない。「もしかしてめぐに惚れちゃったの~?」
「いや、そういうわけじゃないんだ」 「な~んだ、つまんな~い」当てが外れたかぁ。
そう思ったのもあってわざとらしく唇を尖らせてみせる。 だけど、それなら何でわざわざ私の部屋に来たんだろう?「めぐが柚希の話を聞いて協力してくれる事になっただろ?」
「うん、心強い味方が増えたね」 「最初に協力したいって言われた時、柚希俯いてたよな?」さすがお兄ちゃん。
あの状況でそこまで観察してたなんて。「そうだっけ?」
「その後柚希は本当にいいの? って問いかけた」 「迷惑掛けちゃ悪いしね」 「それでもめぐが力になりたいって言った時さ」 「柚希、お前……笑ったよな?」え? アレに気づいたの? もしかして計画の事ばれたのかな?
でもそれだけで驚いた素振りを見せるわけにはいかない。そう思い私は笑顔を張り付けたまま
「凄く嬉しかったからね!」
と答えた。
だけどお兄ちゃんは確信めいたように「そうじゃない。俯いた状態の時、口角だけあがったんだよ」
と告げた。
「……」 「全部、計算してたんじゃないか?」驚いた、まさか本当にそこまで気づいていたなんて。
公園でのいじめもめぐの協力も全て計算して演出した。
でもこの段階でお兄ちゃんが気づくことは計算外だった。「やっぱり兄弟だね……」
計画がバレた以上は仕方ないか。
こうなったら全部話してしまおう。 これはこれで都合がいいし。「うん、全部計算通りだよ」
そう言って私は隠すことのない素の表情を顔に張り付けた。
お兄ちゃんが私のことをずっと好きだった……? にわかには信じられない言葉を聞いて混乱する。「だから柚希のことを気持ち悪いだなんて思わないし、俺のことが好きだと言ってくれて嬉しい」 真っ直ぐ、視線を外さずに言葉を浴びせてくる。 私のことを好きだと言ってくれて凄く嬉しい! だけど、それをどこまで信じていいか疑っている自分もいる。 そんな自分が嫌だとわかりつつも、私の口は勝手に動いていた。「新島先輩は? お兄ちゃんの初恋は新島先輩だったって言ってたよね」 そう問いかけると、お兄ちゃんは困った様に頭を掻きながら答える。「確かに楓は俺の初恋の女の子だ。でもそれは柚希以外での事なんだ」「私以外で?」 首を傾げる私にお兄ちゃんは説明を始めた。「ああ。さっきも言った通り、小さい頃から柚希の事を一人の女の子として好きだった。だけどそれは歳を重ねていく内に許されない恋なんだと知った。だから柚希以外の子を好きになろうと思った。けど、その時の俺は周りから孤立していたし、どこかで無理かもなって思いもあった」 孤立してしまった原因を作ってしまったのは私の所為だし、あの一件で余計にお兄ちゃんの事が好きになったんだっけ。「そんな時、一人の女の子が俺に話しかけてくれた。周りからボッチだのヲタクだの言われてる俺に対して優しく接してくれた。その当時の俺は自ら人を避けていたけど、その女の子と話している間の空間は凄く居心地がよかったんだ。そういう事も重なって俺は始めて柚希以外の女の子を好きになった」 そう語ってくれたお兄ちゃんに対して、私は更に意地悪な質問をする。「水瀬先輩の好意や、友華さんと沙月ちゃんに対してはどうなの?」「こんな俺に好意を寄せてくれるのは凄く嬉しかったし、俺自身みんなに惹かれていってた」 そして深く息を吐き、申し訳無さそうな顔をする。「だから皆とは付き合えないと伝える決意をするのに時間が掛かっちゃって申し訳ないと思ってる」 そう
私は今何て言った? 部屋の前で盗み聞きをして、沙月ちゃんとお兄ちゃんがそういう会話が聞こえてきて……無意識に部屋に飛び込んだ。 その後に沙月ちゃんと口論になって……それから――――『お兄ちゃんの事が好きなんだから!!』 そうだ……お兄ちゃんを盗られたくない一心で――――「柚希……今のって」 お兄ちゃんは状況が理解出来ないといった感じで見つめている。 それもそうだ。突然妹からあんな事言われたら混乱するに決まってる。「やったね柚希ちゃん。やっと言えたじゃん!」 沙月ちゃんが嗜虐的な笑みを浮かべながら私の肩をポンッと叩く。 ハメられた! きっと私が部屋の外で話を聞いてると踏んで沙月ちゃんは最初からこうなる様にお兄ちゃんに色仕掛けしてたんだ! 「っ!」「柚希ちゃん!」「ちょ、待てよ!」 どうしよう! どうしよう! どうしよう! どうしよう! 言うつもりは無かったのに! 妹として傍にいようって決めてたのに! 幾ら沙月ちゃんに煽られたからってあんな事言っちゃうなんて!「はぁ、はぁ……ここは?」 お兄ちゃんから逃げる事しか考えて無かったから、いつの間にか公園に辿り着いちゃった。 でも、ここまで来れば流石に見つかんないよね……。「はぁ……これからどうしよう」 ベンチに腰を下ろすと、つい言葉が漏れてしまった。「ビックリしてたなぁ……」 そりゃそうだよね。実の妹が異性として兄を好きだなんて思ってもみないだろうし。 はぁ……流石に嫌われちゃったよね……。「柚希! ハァハァ&h
『自分の気持に素直になってみたら?』 翌日になっても新島先輩の言葉が頭から離れない。 素直になっても報われないなら……もしかしたら気持ち悪い妹だと思われたらと考えてしまう。「ダメだなぁ……ネガティブな事しか浮かんでこない」 そう独りごちて、思考を振り払う様に頭を振る。それから大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせてお兄ちゃんの部屋のドアをノックして中に入った。「どう? お兄ちゃん。少しは良くなった?」「ああ、熱も下がって倦怠感も無くなったよ」 そう言って腕をぐるぐる回す。 「良かった。でもあまり調子に乗らないように! 今日一日は安静にしててね」「大丈夫だって」「ダメでーす。風邪はひき始めと治りかけが一番重要なんだから」「母さんみたいな事言うな」「はいはい、なんとでも言いなさい。とにかく安静にしてるんだよ」「はぁ、分かったよ」 諦めたようにベッドに横になるお兄ちゃんを見届けて部屋を出た。 少し体調が良くなったからって直ぐ調子に乗るんだから。 でも、良くなってよかった。 リビングでテレビを見ながら勉強しているとインターホンが鳴った。 まさかまた新島先輩が来たのかな? と頭の隅で考えつつモニターを確認すると、今度は沙月ちゃんが立っていた。 玄関を開けると沙月ちゃんは元気良く挨拶してくる。「柚希ちゃんやっほ~」「やっほー。もしかしてお兄ちゃんのお見舞い?」「うん。急だったけど大丈夫かな?」「大丈夫だよ。体調も良くなってきてるし」「よかった~」 家に招き入れお兄ちゃんの部屋まで案内する間、疑問に思った事を聞いてみる。「そういえば、どうしてお兄ちゃんが体調崩したって知ったの? 心配掛けない様に黙ってたのに」「昨日南さんから聞いたんだ~。南さんは楓さんから聞いたって言ってた」「そうだ
水瀬先輩の想いを聞いてから数週間が経った。 当初懸念していた接し方や態度も以前と変わらず、普段どおり接してきてくれるとお兄ちゃんから聞いた。 それに一番驚いたのは水瀬先輩が合コンにハマった事だ。 沙月ちゃんに無理矢理連れて行かれた合コンで、チヤホヤされたのが嬉しかったらしい。 合コンの度に「やっぱりトモより良い男いないや」とボヤいていたので、今でもお兄ちゃんの事は好きなんだと思う。 だけど水瀬先輩はお兄ちゃんにはそんな素振りを一切見せていないらしい。 多分それはお兄ちゃんが好きで、幸せを願っているからこそなんだと思う。 沙月ちゃんのお陰で水瀬先輩は気持ちの整理が出来たのは嬉しい反面、合コンにハマってしまっている事に関してはお兄ちゃんも心配していた。「沙月には感謝だけど、他にやりようはなかったのかなぁ」 とお兄ちゃんがボヤいていた。 まぁ自分の事を好きで居てくれた女の子がいきなり合コンにハマりだしたのだから複雑な気持ちなのだろう。 お兄ちゃんだけでなくグループの人達全員が水瀬先輩の変わりように戸惑っていたみたいだ。 それも最初の内だけで、今では水瀬先輩=合コンというキャラが定着しつつあるらしい。 実際私も何度か誘われたが丁重に断った。 そんな出来事がありながら中間試験も終了し試験休みに入ったのだが、休みに入った途端、お兄ちゃんが熱を出して倒れた。 そして今は看病の真っ最中だ。「もう、お兄ちゃんは無理し過ぎだよ」「ゴホッゴホッ! すまん……」 どうしてこうなったかというと、文化祭のライブが切っ掛けだった。 振替休日が終わり学校へ行くと、1年から3年まで分け隔てなく女子から猛アプローチを受けていた。 授業が終わり帰宅する時には、校門に他校の女子が出待ちまでしてたし。 アプローチされても軽く流せばいいのにお兄ちゃんは一人ひとり丁寧に対応し、睡眠時間をへらしてまでファン達の相手をしていた。 気持ちを無下にできないっていうお兄ちゃんらしい優しさではあったけ
昨日は凄い一日だったなぁ。 お兄ちゃんが水瀬先輩を振るシーンを見ちゃったり、その後参加した打ち上げの後での新島先輩とお兄ちゃんのやり取りを聞いたり。 新島先輩がなんで私にまで話を聞かせたかは未だに分からないけど、問題は水瀬先輩なんだよなぁ。 もしこれで水瀬先輩がお兄ちゃんから離れていってしまったら絶対お兄ちゃんのグループの雰囲気は悪くなる。そうなると中居先輩が黙ってないだろうし……。「それに……お兄ちゃんの好きな子ってやっぱり――」 試験勉強をしていたがどうしてもその事が頭に浮かんでしまう。 残る候補は沙月ちゃんだけだからほぼ確定なんだろうけど……沙月ちゃんはお兄ちゃんのことどう思ってるんだろう。 私のことを応援すると言ってくれてたけど、私の事を理由に断って欲しくない。 例えお兄ちゃんが沙月ちゃんと付き合ったとしても、私はお兄ちゃんの妹だし、これまで通り傍に居られるだけでいい。 そんな事を考えているとスマホの通知音が鳴った。 スマホを手に取り確認する。「水瀬先輩からだ……」 アプリを開いてメッセージを確認する。〈大切な話があるから今から話せないかな?〉 大切な話ってなんだろう? それよりも気持ちの整理はついたのかな。 とりあえず返信しないと。 〈大丈夫ですよ〉 〈ありがと。沙月ちゃんにも話すから今グループ作るね〉 わざわざ3人だけのグループを作って話すことってなんだろう? そう考えている内にグループへの招待が来たので参加する。 沙月ちゃんも参加して全員揃ったところで通話が掛かってきた。「もしもし、こんにちは」「南さんこんにちは~」「2人ともこんちはー。急にごめんね~」「いえいえ、大丈夫ですよ」「はい、丁度暇してたので問題ないです」 話し方や声のトーンはいつもと変わらない。
新島先輩に続いて水瀬先輩までフラれた。 そうなるとお兄ちゃんの好きな女性は必然的に沙月ちゃんって事になる。 沙月ちゃんには今まで色々相談に乗って貰ったり、私の唯一の理解者でもあった。 だからこそ私が沙月ちゃんを祝福してあげないと。「待たせて悪いな」「ひゃっ!」 考え事をしていたらいつの間にかお兄ちゃんが校門にやってきていた。 ビックリして変な声出ちゃったけど不審に思われないよね?「なんだよその反応は。ちょっと傷ついたぞ?」「ご、ごめん。ちょっと考え事してたからお兄ちゃんに気づかなくて」「まぁ遅くなった俺が文句言えないか。んじゃ行くか」「……う、うん」 水瀬先輩はどうしたの? という言葉を飲み込んだ。 私があの現場を見ていたと知ったら色々気まずいだろうし、何より水瀬先輩の事を思うと私が見てたという事実は無かった事にした方がいい。「文化祭は楽しかったか?」「楽しかったよ。特にお兄ちゃんのライブは興奮したなぁ~」「その話はやめてくれ。皆褒め過ぎなんだよなぁ」「とか言ってお客さんを凄い煽ってたりしてたじゃん」「あ、あれはああやれって言われたから仕方なくだよ」「それにちゃっかりクラスの宣伝までしちゃって~」「うぅ、あれは……もうなんとでも言え!」「あはは、ごめんごめん」 お兄ちゃんを揶揄っていると打ち上げ会場に着いた。 入店すると沙月ちゃんが出迎えてくれた。「柚希ちゃんいらっしゃ~い」「おじゃましま~す」 沙月ちゃんと軽いハイタッチをしながら挨拶を交わす。「あ、友也さん遅いじゃないですか~」「掃除当番だったから皆には先に行ってて貰ったんだ」「そうだったんですね。じゃあ早く着替えてきてください、忙しいんですから」「ああ、わか……って今日は客で来てんだよ」「え? 手伝ってくれ







